任意整理の依頼から和解までの流れ|代理人が行う事務を時系列で解説
任意整理は裁判所を通さないため、依頼後の進行が見えにくい手続です。日本弁護士連合会の会規が列挙する「任意整理で通常行われる事務」を手がかりに、面談・受任通知・取引履歴の開示・引直し計算・和解・報告までを時間順に整理し、報酬の上限と法テラスの立替基準も条文と公表資料で確認します。

任意整理は、裁判所を通さずに債権者と話し合う手続です。裁判所を通さないため、「依頼後に何が進んでいるのかが分からない」という声が多く聞かれます。ただし、弁護士が債務整理事件を受ける際に守るべき事項は、日本弁護士連合会の会規「債務整理事件処理の規律を定める規程」に書かれており、そこには任意整理で通常行われる事務がイからトまで列挙されています。本記事では、その列挙と条文をもとに、依頼日から和解までの流れを時系列で説明します。どの方針が適切かという判断は事案によって異なるため、本記事では扱いません。
依頼当日:面談で聴取される事項
同規程3条1項は、弁護士が債務整理事件を受任するにあたって、受任予定の弁護士自身が債務者と面談して、次の事項を聴取しなければならないと定めています。
- 債務の内容
- 債務者(生計を同じくする家族があるときはその家族を含む)の資産、収入、生活費その他の生活状況
- 不動産を所有している場合は、その処理に関する希望
- そのほか、当該債務整理事件の処理に関する意向
面談が困難な特段の事情があるときは、事情がやんだ後すみやかに面談すれば足りるとされ、その場合でも電話・書面・電子メール等で同じ事項を把握したうえで受任しなければならない(同条2項)とされています。面談は債務者ごとに行うのが原則です(同条3項)。出典:債務整理事件処理の規律を定める規程 第3条(日本弁護士連合会・会規第93号)(2026年9月28日確認)
そのため、収入・支出・資産の実情を事前に整理しておくと、面談が円滑に進みます。
依頼当日:受任に際して受ける説明
同規程4条は、受任に際して事件処理の方針および見通し、弁護士費用、そして方針にともなって生じることが予想される不利益事項を説明しなければならないと定めています。列挙されている不利益事項には、破産手続を選んだ場合に法令上就くことができない職業があること、信用情報機関に返済能力に関する情報が登録され金融機関からの借入れ等に支障が生じるおそれがあることなどが含まれます。また6条は、事案に応じて必要かつ相当と認められる場合には民事法律扶助制度を説明し、利用を希望するときはその利用が可能となるよう努めるとしています。出典:同規程 第4条・第6条(2026年9月28日確認)
費用面の不安から相談をためらっている場合は、この6条の規定を確認しておくことをおすすめします。
受任直後:債権者への通知と取引履歴の開示請求
同規程10条1項2号は、任意整理事件で通常処理される法律事務をイからトまで挙げています。その先頭が、イ「債権者に対し、事件を受任したことを通知し、取引履歴の開示を要求すること」です。かっこ書きでは、債務者およびその家族・保証人等の関係者への請求を差し控えるよう要求すること、違法行為を行っている債権者に対して支払の拒絶を通知することも含むとされています。出典:同規程 第10条第1項第2号(2026年9月28日確認)
これが、いわゆる受任通知です。通知を受け取った債権者側の対応は、貸金業法21条1項9号が定めています。同号は、貸金業を営む者などが、債務者等が債務の処理を弁護士等に委託し弁護士等から書面によりその旨の通知があった場合において、正当な理由がないのに、電話・電報・ファクシミリ・訪問の方法で債務の弁済を要求し、債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で要求することを禁止しています。違反には罰則があり、同法47条の3第1項3号は2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科と定めています。出典:貸金業法 第21条・第47条の3(e-Gov法令検索)(2026年9月28日確認)
この条文の適用範囲については誤解が多いため、受任通知が出たあとの生活で条文の文言に即して整理しています。
取引履歴の受領後:引直し計算
続くロとハは、ロ「債権者との取引について利息制限法が定める利息の利率による引直し計算を行うこと」、ハ「ロの引直し計算の方法について債権者と交渉をすること」です。取引履歴がすべて開示されて初めて、残債務の額が確定します。件数が多いほど、また取引が古いほど、この段階に時間がかかります。
計算の結果、過払いが判明する場合があります。規程2条6号は、引直し計算の結果、弁済すべき金額を超えて支払った金額を「過払金」と定義しています。
債務額の確定後:分割弁済の交渉と裁判外の和解
ニは、「引直し計算をした結果、債務者が負担することが明らかとなった債務について、主に債務者の将来の収入を弁済原資として、債権者との間で分割弁済の交渉をして裁判外で和解をすること」です。「主に債務者の将来の収入を弁済原資として」という一句が、この手続の性格をよく表しています。任意整理は、残債務を将来の収入から弁済することを前提とした交渉であり、弁済原資を説明できない場合には成り立ちません。
和解が成立したあと、その和解に基づく割賦金の支払いを代行する事務(ホ)を受任する場合があります。過払金があるときは、その返還請求と回収(ヘ)が行われます。
なお、何年で分割するか、将来の利息をどう扱うかは、法令に定めのある事項ではなく相手方との交渉によって決まります。一般に相場とされる水準はありますが、公的機関が公表している数値を確認できなかったため、本記事では具体的な数値を記載していません。
和解成立後:結果報告の義務
同規程17条2項は、破産・再生の申立事件を除く債務整理事件について、和解契約書、調停調書その他の法律事務処理の結果を示す文書を作成し、または受領したときは、遅滞なく、その原本または写しを債務者に交付しなければならないと定めています。3項は、債権者が開示した取引履歴その他の重要な事項について報告・説明をするときは、自ら面談するか書面等の方法によって行い、必要に応じて引直し計算の結果を記した書面等を示さなければならないとしています。4項は、過払金の返還を受けたときの報告と清算の書面報告を求めています。出典:同規程 第17条(2026年9月28日確認)
費用に関する規程上の定め
弁護士費用の額は原則として自由に定められますが、同規程は任意整理の報酬金に上限の枠を置いています。
| 報酬の種類 | 規程の定め | 条文 |
|---|---|---|
| 解決報酬金 | 債権者1人当たり、5万円を超えない範囲内で規則で定める上限の金額を超えてはならない | 第13条 |
| 減額報酬金 | 減額され、または免れた債務の金額を経済的利益として、10パーセント以下の範囲内で規則で定める割合を乗じた金額を超えてはならない | 第14条 |
| 過払金報酬金 | 回収した過払金の金額を経済的利益として、25パーセント以下の範囲内で規則で定める割合を乗じた金額を超えてはならない | 第15条 |
| 着手金 | 受任の際に定めた額が不相応となったときを除き、追加して請求・受領してはならない(例外の場合を列挙) | 第10条第2項 |
出典:同規程 第10条・第13条〜第15条(2026年9月28日確認) なお同規程9条2項により、これらの金額に消費税額は含まれません。
収入・資産が基準以下であれば、法テラスが弁護士・司法書士費用を立て替える制度があります。法テラスは任意整理事件の依頼時に必要な費用の目安を公表しており、債権者1社で着手金33,000円+実費10,000円の合計43,000円、5社で110,000円+25,000円の135,000円、21社以上で198,000円+35,000円の233,000円としています(実際の費用は事件の内容等により審査で決まり、必ずこの金額になるとは限らないと注記されています)。出典:任意整理 費用の目安(法テラス)(2026年9月28日確認)/立替えは分割払いで利息等はないとされています:弁護士・司法書士費用等の立替制度のご利用の流れ(法テラス)(2026年9月28日確認)
任意整理の枠に収まらない場合
収入から将来の分割弁済を組み立てられない場合、任意整理の枠には収まりません。その場合に検討されるのが、裁判所を利用する手続です。個人再生の二つの型、自己破産で手元に残るもの、そして本人が申し立てる特定調停については、それぞれ別の記事で解説しています。いずれを選択するかは事案によって異なります。
相談窓口
任意整理を依頼するかどうかを決める前に、相談できる窓口があります。費用の負担が心配な場合は、無料の窓口から順に相談することができます。
- 弁護士(弁護士会の法律相談センター):「ひまわりお悩み110番」0570-783-110 にかけると、その地域に近い弁護士会の法律相談センターにつながります。全国約300か所で法律相談が行われており、相談時間はおおむね30分、相談料は地域や相談内容により異なるものの5,500円前後と案内されています(受付時間の記載はありません)。出典:ひまわりお悩み110番(日本弁護士連合会)(2026年9月28日確認)
- 司法書士(司法書士総合相談センター):全国約150か所で、借金問題を含む相談を受け付けていると案内されています。出典:司法書士総合相談センター一覧(日本司法書士会連合会)(2026年9月28日確認)
- 法テラス:サポートダイヤル 0570-078374(平日9時〜21時、土曜9時〜17時。祝日・年末年始を除く)。資力の基準を満たす場合、弁護士・司法書士による無料法律相談を1回30分・同一の問題につき3回まで利用できます。出典:法テラス・サポートダイヤル(2026年9月28日確認)/無料法律相談のご利用の流れ(法テラス)(2026年9月28日確認) 当サイトの法テラスの使い方ガイドもあわせてご参照ください。
- 日本クレジットカウンセリング協会:多重債務ほっとライン 0570-031640。公益財団法人であり、相談料は無料と案内されています。出典:公益財団法人日本クレジットカウンセリング協会(2026年9月28日確認)
- 消費生活センター:消費者ホットライン「188」。契約や取引についてのトラブルの窓口です。出典:消費者ホットライン(消費者庁)(2026年9月28日確認)
- 財務局など:金融庁は、多重債務についての相談先として法テラス・日本弁護士連合会・日本司法書士会連合会・日本貸金業協会・日本クレジットカウンセリング協会・全国銀行協会を案内し、全国の財務局の多重債務相談窓口の一覧も掲載しています。出典:相談・情報提供窓口(金融庁)(2026年9月28日確認)
相談先を決められない場合は、当サイトの相談先ディレクトリをご利用ください。窓口を用途別にまとめています。
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この記事の執筆者
マネーガイドジャーナル編集部
金融関連の情報サイトについて多数の運営実績を持つ編集チームです。株式・不動産・FXなど幅広い金融資産の運用経験と、外資系ITコンサルティングファームで金融機関の案件に従事した実務経験をもとに、公式サイト・公的機関の一次情報を確認しながら記事を制作しています。
- 掲載情報は、公式サイト・政府広報・金融庁等の一次情報で確認し、確認日を記載しています
- 確認できなかった情報は「確認できず」と記載し、推測による断定は行いません
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